Web集客には広告やSEO、YouTubeなど、さまざまな施策が存在します。どんな施策を進めるにしても、各施策の費用対効果や特性を正しく把握した上で、実施すべきことを検討する必要があります。しかし、多くの中小企業ではWeb集客のプロと呼べる人材が不足しており、誤った打ち手を取ってしまうケースがよくあります。
予算をやりくりしてWeb集客を進めても、打ち手が間違えていれば、無駄に終わる可能性が高いです。
本記事では、集客施策ごとのコスト感と、期待できる効果をご紹介します。その中で、キャッシュに余裕を持てない中小企業がどんな手順でWeb集客に取り組むべきなのか、併せて解説いたします。
Web集客施策の一覧
YouTubeやSNS、検索エンジンなど、その手法は多岐にわたります。施策によって費用感や効果は大きく異なるため、Web集客に割けるリソースに応じて、正しい打ち手を検討する必要しなければなりません。特に予算に限りがある中小企業こそ、情報を正しく把握した上で施策を検討しなければ、その予算を溶かすだけで終わることも。
主な施策のコスト感と効果は、次のようにまとめられます。
それぞれの施策について、詳しく見ていきましょう。
SEO
SEOとは、検索画面上で自社のWebサイトを上位表示させるための施策です。Webサイトに記事コンテンツを投稿し、そのページへの流入を増やすことで、自社の認知を拡大し、売り上げ増加につなげます。
SEOはインハウスで進めることもできますが、スキル無しで取り組むには知るべきことが膨大です。そのため、基本的には支援会社に依頼して進めていくことが多いです。外部に依頼する際の費用感は非常に幅がありますが、以下のような相場にまとめられます。
SEO対策 | タイプ | 費用・料金 | 目的 | 対策概要 |
SEOコンサルティング | 月額固定費用型 | 10万~50万円/月 (大規模だと100万円を超えることも) | サイト企画からコンテンツ作成まで | 調査・分析・企画、 コンテンツの作成指示、ライティング指示・指導 |
SEOサイト設計コンサルティング | 一括支払い型 | 10万~100万円以上 | SEO効果を狙ったサイトをスムーズに立ち上げたい | 調査・企画・分析 |
コンテンツSEO | 一括支払い型 月額固定費用型 | 記事本数×記事単価 (数千円~10万円) | 記事の作成によるアクセスアップ | 記事の作成 |
内部SEO対策 | 一括支払い型 | 10万~20万円 | 手っ取り早く順位を上げたい | タグや内部リンク、 システム面の調査・修正 |
外部SEO対策 | 月額費用固定型 成功報酬型 | 月額固定:1万~15万円/月 成功報酬:1万~100万円以上/月 | 手っ取り早く順位を上げたい | 外部リンクによるSEO対策 |
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引用:Web幹事
SEO施策は年単位での取り組みになります。何かしらの成果がでるまで少なくとも半年程度の期間が必要になり、その間も記事を制作するコストは発生し続けます。そのため、キャッシュに余裕がなければ、売り上げにつながる前に運転資金が尽きるリスクを孕んでいます。
またSEOを検討する際、商材の単価、そしてビジネスの商圏についても確認したいポイントです。SEOは中長期的にコストが発生します。商材の単価が安いと、SEOで利益を生むためには膨大な数が売れなければいけません。また、ビジネスの商圏が地方等に限定されていると、検索する母数が大幅に減るため、費用対効果の面でSEOは難しいです。
そのため、商材の単価が高く、全国的にサービスを展開しているような事業であれば、SEOは適しています。併せて、中長期で継続したコストを捻出できることも条件と言えるでしょう。
YouTube
集客にYouTubeを活用するケースは、ここ数年で非常に増えています。YouTubeを利用する目的は、自社の商材を販売すること、すなわち営業やマーケティングの代替としての役割が一般的です。ほかにも、企業のブランディンングとしてYouTubeを活用することで、採用力を強化する事例も存在します。
基本的にどんなビジネスであってもYouTubeを活用できますが、中でもコンサルや不動産など、営業において説明コストが高い商材は適しています。商材1つ販売するために膨大な工数が発生するものでも、YouTubeであれば動画を1つ作ることで、それ自体が営業としての役割を果たしてくれます。
また単価が高い商材も、YouTubeには適しています。YouTube自体は無料で始めることができますが、企画から制作、運用までプロに任せようと思うと、外注費が月に100万円を超えることも少なくありません。単価が100万円を超えるような商材であれば、YouTube経由で1件成約につながるだけでコストはペイできます。ちなみに、YouTubeの制作や運用を外注する場合の相場は以下の通りです。
対応内容 | 価格相場 |
動画編集 | 〜3万円/本 |
動画編集+企画構成 | 5万〜10万円/本 |
動画編集+企画構成+運用、コンサル | 30〜150万円/月 |
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参考:Web幹事
YouTubeでの情報発信を通じて、業界の専門家としてのポジションを築くことは、営業の成約率を高めることにもつながります。顧客が自社について好意的な印象を持っている状態から商談をスタートできることで、成約に至るまでの営業工数を大幅にカットします。
SNS
集客目的で使われるSNSのうち、主流なものはInstagramとTwitterです。アクティブユーザー数が多く、さまざまなビジネスの集客に活用されています。
費用は一切かかりません。個人のSNSと同様に、企業としてのアカウントを作成すれば運用を始められます。
SNSでは消費者に対して情報を発信できるため、BtoCと相性が良いです。BtoBであっても、該当分野の事業のプロとして情報を発信することで、その分野の第一人者として認知拡大につながります。ニッチなジャンルであるほど、表立って情報発信をしている人も少ないため、積極的に情報発信することで、特定分野での第一想起に上がりやすくなります。そのため、ジャンルを問わずSNSを活用できるシーンは多いです。
ただ、BtoC、BtoBのどちらにせよ、フォロワーを獲得するまでは時間がかかるため、売り上げにつなげるには中長期的な視点が必要です。毎日ある程度のリソースを確保した上で、施策の進めることになるでしょう。
MEO
MEO(Map Engine Optimization)はGoogleマップ上での評価を高める施策です。Googleマップで「カフェ」と検索すると、該当エリアに存在するカフェがピックアップされます。店舗系のビジネスであれば、Googleマップの情報を見て、来店につながるケースが多いため、ぜひ押さえておきたい施策です。
また、MEOを実施していると、検索画面にも優先的に表示されます。例えば「地域名 Web制作会社」のように調べると、通常の検索画面上でもさまざまな情報が表示されます。
MEO対策自体は、自身で行えるため無料です。基本設定を代行している会社もあるため、リソースが足りていない場合は依頼してもいいでしょう。
MEOはマップエンジン最適化というだけあって、地域での認知を拡大するための施策です。たとえ全国にサービス展開するようなビジネスであっても、ローカルでの顧客獲得につながるため、非常にメリットは大きいです。
また、MEOは店舗を構えるようなBtoCに適しているようなイメージを持たれますが、通常の検索においてもエリア検索で表示されやすくなるため、商材に限らず取り組む価値があります。
広告
Web広告の大きな利点は、ターゲットをセグメントできることです。例えば、コスメを販売している事業者であれば、東京都在住の30代女性にのみ広告を配信するといったように、事業のターゲットに合わせて、広告の配信先を限定できます。広告は商材に興味を持ってくれそうな人に対して、情報を直接届けられるため、購入につながる可能性も高いです。そのため、施策の実行から売り上げ発生までの期間が短く、即効性の高い施策と言えるでしょう。
費用に関しては、どれくらい広告を配信するかによって異なります。大規模な会社では数千万円規模の予算を投じることもあれば、キャッシュに余裕がなければ、数万円の予算でやりくりすることも可能です。
広告を配信することは、外部に依頼せずとも自社で実施できます。ただ、どの媒体で配信するのか、ターゲットの選定、広告文の作成など、少なからず学習コストは発生します。特に、媒体選びやターゲットの選定については、成果に大きく影響するポイントですので、外部に委託しながら、スキルを身につけていくことも選択肢としておすすめです。
状況によって施策の優先順位が異なる
Web集客にはさまざまな施策がありますが、事業フェーズやキャッシュの状況など、その時々によって取り組むべきものは変わります。例えば、キャッシュが不足しており、どうにかして売り上げを立てないといけない状況において、SEO対策を始めることは不適切です。SEOは売り上げにつながるまでに時間がかかりやすいため、成果が出る前に資金がショートします。
そのため、キャッシュの状況や、効果が出るまでの期間、その施策が事業フェーズに適しているかなど、多角的に検討しなければなりません。
Web集客のよくある失敗事例
どんなビジネスにしろ、顧客がいないことには売り上げが立ちません。そのため、集客施策はどんな事業であっても重要性の高い問題です。ただ、多くの企業では集客の専門家がいないため、成果につながらず失敗に終わるケースも多々あります。
ここでは中小企業が陥りやすい、Web集客の失敗事例をご紹介します。
広告打っても、WebサイトやLPの情報不足でCVが発生しない
売り上げを立てるために、とりあえず広告を打つけれど、予算を溶かすだけで終わるパターンです。
主な原因としては、広告の流入先であるWebサイト内の情報が不足していることです。どれだけ商材が優れていても、顧客に伝えるべき情報が揃っていなければ意味がありません。
広告を活用する上で流入数を増やすことは重要ですが、流入した人たちに購入してもらうことも同じくらい重要です。
ちなみに広告からの売り上げは、以下の式で算出できます。
広告施策によって改善できる部分は、imp(広告の表示回数)とCTR(広告のクリック率)です。つまり、広告の役割はWebページへの流入数を増やすことだけです。広告による売り上げを増やすためには、CVRの改善、すなわち流入先となるWebページを改善することが欠かせません。
極論CVRが0だと、どれだけ集客できたとしても、売り上げにつながりません。言うなれば、穴の空いたバケツに水を入れ続けているようなものです。
売り上げにつなげるためには、Webページ内の情報を充実させる必要があります。もし電化製品を購入するとして、価格だけで選ぶでしょうか。どんな機能があるのか、保証はついているのか、利用した人の口コミなど、さまざまな情報を参考にするでしょう。自社の商材を選んでもらうためには、顧客が検討する際に必要な情報を網羅しておく必要があるのです。
上位表示を目指した闇雲なSEO
SEOで失敗している中小企業は非常に多いです。検索上位を目指して記事を増やすけれど、売り上げには一切つながらない、そんな事例も後をたちません。
主な失敗理由としては、十分なリソースを割けていないことが挙げられます。SEOで成果を上げるためには単に記事を書くだけでは不十分です。ターゲット設定、キーワード選定、企画構成、ライティング、運用分析など、1つの記事を作るだけでも、それなりの工数がかかります。多くの中小企業ではSEOをやるにしても、兼業でやることがほとんどです。そうなると、成果が出せるほどの工数を割くことができず、結果的に失敗に終わります。
また、需要を想定した記事を書けていないことも1つの要因です。自社の伝えたい情報ばかり書いても、それがユーザーにとって興味のないことであれば、売り上げにつながることはありません。ユーザーの需要を把握し、その情報を網羅できる記事を作ることで、ようやくSEOとしての評価が生まれます。
SEO自体は意味あることですが、リソースを確保できない状況では、成果につながりにくいです。キャッシュに余裕が持てない状況であれば、なおさらSEOは適していません。
中小企業が低コストで始めるWeb集客の3つの手順
中小企業の多くは、Web集客をするためのリソースが足りません。そんな中、自社の状況に適していない集客施策を選んでしまえば、単に予算を溶かすだけで終わります。ここでは低コストでも成果につながりやすい、Web集客施策をご紹介します。
まずは集客先になるWebサイトの制作
Web集客をするためには、基本的にWebサイトが必要です。
Webサイトは、飲食店で言うところの店舗そのものです。店舗に来てくれる人を増やすために宣伝するのと同じで、Web集客においても最終的にはWebサイトに来てもらい、そこからお問い合わせが発生することで、売り上げにつながります。
また、すでにWebサイトがあったとしても、情報が不足していれば効果は半減です。顧客が検討するにあたって必要な情報を網羅することで、ようやく成果につながります。サービスの特徴や料金、競合との差別化ポイントなど、顧客がどんな情報を必要としているか把握した上で、Webサイトを設計することが大切です。
Webサイトの利点は、訪れた人の動向を定量的に計測できることです。「お問い合わせをくれた人はどのページを見ている」「ページのこの部分で離脱している人が多い」など、さまざまな事柄を把握できます。Web集客においては、施策を行いながら改善を繰り返し、成果を最大化させていくことが基本的な考えです。
そのため、Web集客をするのであれば、Webサイトに必要な情報を網羅すること、そして分析できる状態にしておくことが欠かせません。
MEOで地域での認知拡大
MEOは無料で始められる上に、それなりの集客効果も期待できることから、最優先で取り組むべき施策です。MEO対策をしておけば、ユーザーがエリア系のキーワード(「新宿 カフェ」など)で検索したときに上位表示されるため、地域での認知拡大につながります。サロンや個人の飲食店などであれば、MEOだけで十分なケースもあるほどです。
MEOはWebサイトがなくても実施できます。ただ、そこに表示される情報だけだと、自社の魅力についてはどうしても網羅できないため、Webサイトを併せて活用することが効果的です。MEOで自社のことを知った人のうち、詳しく知りたい人はWebサイトに訪れます。そのWebサイト上に顧客が検討する上で必要な情報を網羅しておくことで、CVRの増加につながります。
広告で見込み顧客に訴求
Web広告は即効性の高い施策であり、数万円という低コストでも集客効果を発揮します。見込み客に絞って広告を配信できることも、コスパ良く集客できるという意味で大きなメリットです。
広告を回す際は、基本的に流入先となるWebページ(WebサイトやLPなど)を持っていることが前提となります。また、Webページ内の情報が不足していると、広告で流入させても売り上げにつながることはありません。
そのため、広告を活用する際は、あらかじめWebページを改善しておくと、コストを無駄にすることなく集客を始められます。
まとめ
集客はあらゆるビジネスでの至上命題です。特に中小企業においては、とにかくキャッシュを積み上げていく必要がある一方で、予算の制約が大きく、十分にWeb集客ができていないケースも多いでしょう。
低コストでWeb集客を始めたい場合は、まずMEOから始めるようにしましょう。無料で始めることができ、かつ工数もそれほどかからないため、最初の施策としては打って付けです。その後、数万円程度の予算が割けるのであれば、即効性の高い広告の活用も検討しましょう。
いずれの施策においても、WebサイトやLPといった自社のWebページを持っておくことが、CV数を増やす上で非常に重要です。Webサイトを揃えた上で、集客施策に取り組むことで、費用が無駄になることなく、成果が最大化されます。